浸蝕

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最愛の小説、江國香織さんの『ホリー・ガーデン』。
中でも特に好きなのは「考えない練習」という章です。

主人公の果歩は、簞笥の上のビスケットの缶の中に「過去」を隠しています。
彼女はいつも、その缶のことを考えない練習をしているのですが、
頑張れば頑張るほどその存在が忘れられなくなり、
結局……ふたを開けてしまうのです。

私も彼女と同じ、ビスケットの缶を持っています。
テープでぐるぐる巻きにして、簡単に開けられないようにして、
目につかない場所にしまってあります。

だけど、今日、うっかりと缶を開けてしまいました。

部屋の空気が端から過去に浸蝕されていくのを感じながら、
ああ、やっちまったぜ、という思いの中に
どこかほっとした思いも混じっていました。

もしかしたら、一生懸命「考えない練習」をするよりも
たまに「考える練習」をした方が
精神の健康にはいいのかもしれませんね……

【お知らせ】在廊予定

13日から始まる東京シャッターガール写真展の在廊予定です。
調整中のところに2〜3日撮影が入る予定なので、その日程が決定し次第こちらの記事に書き込みます。
お会い出来たら嬉しいです!

13(日)夕方(16:00か17:00)〜19:00
14(祝)×
15(火)×
16(水)×
17(木)×
18(金)×
19(土)昼すぎ〜17:30くらいまで
20(日)×
21(月)×
22(火)午後〜18:00
23(水)×
24(木)×
25(金)×
26(土)×
27(日)15:00くらい〜18:00

今回の写真集に関しては、悩んだのですが、ZINEにはいたしません。欲しいと仰って下さった方、ありがとうございます。そしてごめんなさい!

* * * * *

PHOTO EXHIBITION
TOKYO SHUTTER GIRL:2

展示期間
10月13日(日)〜27日(日)
11:00〜19:00

会場
アルティザンTOKYO(JR・南北線 駒込駅)
http://www.artisan-tokyo.com/pages/photogallery_tokyo.html
東京都文京区本駒込6-15-8 エルピスビル
TEL:03 ( 5976 ) 7733

興味

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百田尚樹さんの『海賊と呼ばれた男』を読みました。

入院しているときに『風の中のマリア』『永遠の0』を読み、百田尚樹さん面白いなあと思い、最新作である『海賊と呼ばれた男』にもチャレンジしてみた次第です。出光興産の創始者である出光佐三氏の伝記的小説です。この中に「イランから石油を輸入する」というくだりがあるのですが、そこで久しぶりに思い出したのです。「あ。イラン」と。

話はだいぶ遡りますが、私は大学生時代、「イスラムの歴史」「中東の歴史」「アラブの歴史」「イランの歴史」といった授業を好んで履修しておりました。アメリカ同時多発テロ事件直後の時期であり、世界が「イスラム世界」に注目していたことにわかりやすく影響された結果です。ちなみに、自分の所属は法学部法律学科です。イスラム何の関係もない。

中でも「イランの歴史」の授業が印象深かったです。耄碌としたお爺ちゃん先生が語る「イランの人は砂糖を食べてからお茶を飲む」「女性は顔をチャドルで隠しているので基本的に誰が誰かわからない」などの、見たことも聞いたこともないイラン風俗の話がとても興味深く、面白かったことを鮮明に覚えています。未知の領域の話を聞くのが好きなのは昔からです。

そんな「イランに興味があった自分」を、『海賊と呼ばれた男』を読んで思い出したというわけです。

そこで、思い立ったら吉日、が人生のテーマである私は「数年ぶりにイランの本でも読んでみるか」と思い、Amazonで関連のありそうな本を探しました。いくつか候補があったのですが、最終的に『イラン人は面白すぎる!』(エマミ・シュン・サラミ/著)という新書を選びました。決め手は、著者の方が「在日イラン人であり、現在は吉本興業所属のお笑い芸人」という斬新なプロフィールだったからです。

読んでみた感想ですが。いやあ、タイトル通り、面白すぎました。イラン=危険すぎるテロリスト国家、という負のイメージを見事に覆されました。本全体にイランおもしろエピソードが溢れていて始終笑いが止まらない仕様になっています。特に抱腹絶倒だった話を8つ引用させていただきます。

1 イランでは『おしん』が大人気であり、かつての世論調査で「大統領になってほしい人」に泉ピン子がランクインしたことがある。

2 ラマダン(断食月)中はイライラが募るためモノに八つ当たりする人が多くなり、家具や電化製品の売り上げがいつもの5倍くらいになる。

3 ラマダン中はグルメ番組の放送が禁止になる。有名シェフが料理を披露する一時間番組は、料理ができないため、仕方なくシェフが音楽に合わせて踊るというダンス番組に変わる。しかし空腹のため最初の5分でバテる。(謎)

4 3に関してはアニメも例外ではなく、『それいけ!アンパンマン』ではアンパンマンの顔にモザイクがかかる。バイキンマンと闘うヒーローの方にモザイクがかかり、どっちが悪者かわからない不思議なアニメと化す。(※試しに作ってみたけど、どう見てもアソパソマソの方が犯罪者)

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5 一夫多妻制なので、日本ではよく「野球チームがつくれるくらい子供が欲しい」と言う人がいるが、イランの石油王の家庭だとチームどころではなくリーグ戦が行えるくらい子供がいる場合がある。

6 イスラム刑法であるシャリア法の原則は「目には目を、歯には歯を」で名高いハンムラビ法典からきている。それに従いすぎて珍罰刑が言い渡されることがある。女性の着替えを盗撮した男が「パンツ一丁で、被害者の女性の家族全員にバシャバシャ写真を撮られる刑」を、近所の家で飼われていたニワトリを盗んだ男が「ニワトリを盗まれた被害者が男の家を訪れた際には、晩ゴハンを振るまわなきゃいけない刑」を、許可されていない欧米の音楽を聞いた男が「24時間コーランを唱えたCDを聞かされる刑」を言い渡されたりする。

7 イランでは受験戦争が熾烈を極めている。近年では日本で働いていたイラン人が世界中でおきている漢字ブームに目をつけ「合格」「勝利」などの熟語を用いた受験グッズをヒットさせている。しかし「横綱」「鬼嫁」「野人」「牛角」(←変換ミスと思われる)などのあきらかに受験とは関係のない熟語まで商品化されている。

8 ナンの需要が高いので、国立大学の中に「ナン学部」が存在する。

…などなど。他にも、たくさんの面白いエピドードが掲載されています。読んで良かったです。サラミさんありがとう。

イランが危険な側面を持っていることも事実なのでしょう。でもそれが全部ではない。無知ゆえの勘違いってありますよね。海外の人だって日本をえらく勘違いしているし。知人はアメリカで現地の人に「Are you NINJYA?」と本気で聞かれたことがあると言いますし、私も学生時代、フランスからの留学生にやはり「忍者の修行はどこでするのか」と真顔で聞かれたことがあります。いねーよ!!!と思いつつも、それが現状なんだなあと思います。

この本を読んでますますイランに興味を持ったので、来年あたり旅行してみようかなと思っています。真実はこの目で確かめないとね。

ところでペルシャ語ってどこで習えるんですかね?

私の好きな東京

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「私の好きな東京」入稿しました!
表紙はこんな感じです。33×28cmと、わりと大きなサイズの本です。96ページになりました。地味な内容ですが、「東京シャッターガール写真展」でよろしければご覧下さいませ。

この本で写真集は11冊目なのです。プロフィールページの下の方にいままで作った写真集をまとめて掲載しています。気合いを入れれば1年に4冊くらい作れることがわかりました。まだまだ作るぜ〜!最近は、中判カメラを始めた時のような新鮮な気持ちが自分に戻ってきました。怒られてもなんだかとても楽しい。
http://shutter-girl.jp/?page_id=2

あと!映画『東京シャッターガール』の会場で(たぶん)販売されるパンフレットにコラムを寄稿させていただきました。撮り下ろし写真もついております。真面目ではなくおもしろ系なので雰囲気を乱していたら大変申し訳ございません。と先に謝っておきます。

* * * * *

PHOTO EXHIBITION
TOKYO SHUTTER GIRL:2

展示期間
10月13日(日)〜27日(日)
11:00〜19:00

会場
アルティザンTOKYO(JR・南北線 駒込駅)
http://www.artisan-tokyo.com/pages/photogallery_tokyo.html
東京都文京区本駒込6-15-8 エルピスビル
TEL:03 ( 5976 ) 7733

映画『東京シャッターガール』
10/12(土)~10/25(金)限定レイトショー
池袋シネマ・ロサ
http://www.cinemarosa.net/

645

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少し前に、ペンタックス645をお借りしました。
そんなわけで最近は645フォーマットが自分の中で流行っています。
長方形、楽しいですね。

10/13から始まる「東京シャッターガール写真展」に、新しい写真集を出展する予定です。タイトルは「私の好きな東京」です。90ページくらい。写真はすべてペンタックス645で撮影しました。正方形じゃない写真集を作るのは、初めてだったりします。

東京生まれ東京育ちの自分が考える「東京像」を、1冊の写真集で表現しました。今回はモデルさんはいません。東京都内に存在しているモノや景色や生き物だけを撮って構成しました。とても地味ですがいままでにないタイプの写真集になったかな〜と思っています。

もともとは、東京で住んだことのある5カ所(大崎・田町・祖師ケ谷大蔵・北千住・新宿)のみで撮影をして「自分のルーツを辿る旅」みたいな内容にしたかったのですが、途中から「もっと写真を入れたい!」と思うようになり、結局、自分の好きな場所を含めた10カ所以上で撮影をしてしまいカオスになりました…。

幼稚園のときに衝突して顔を30針縫うことになったブランコ(まだあった)や、ホラー漫画を読みふけっていた児童館や、半紙に墨で「好きでござる」と書かれたラブレター的な何かをもらった川のほとりや、元彼にボコられて骨折した家など、甘酸っぱい思い出がいっぱいの場所ばかり撮影しましたキャッホー!誰もわからないと思うけど!

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物事はある日突然に

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9月16日夜、大好きなヒャダインさんのワンマンライブへ。
生ヒャダインさんを目の前にして、「ヒャッハァァァァ」と世紀末テンションに。

家路についた頃、お腹に空気がたまっているような鈍い痛みを感じました。
「騒ぎすぎて筋肉痛にでもなったんだろう」と思いました。

そんな考えとは裏腹に、時間が経つにつれ、お腹の痛みはどんどん増してきます。寝る頃には胴全体に板が入っているような鋭い痛みがあり、寝返りが打てないほどに。ただ、こういったハライタは過去に何度かあり、100%寝たら治っていたので、今回も「まあ、寝て起きたら治っているだろう」と思い、その日は無理矢理就寝しました。

そして9月17日の朝。

全 然 治 っ て な か っ た

むしろ昨晩よりも痛いんじゃないかという状況。さくらももこさんが某エッセイ本で盲腸になったときの痛みを「いつもの腹痛が日本舞踊なら今度の腹痛はフラメンコである」と形容されていましたが、まさにそんな感じでした。ズンドコズンドコ…。そして、自分の痛みを分析してみると、右下腹部が特に痛むことに気が付きました。まさか、盲腸…?とても嫌な予感がした私は、病院へ行くことを決意しました。

※実は、先月母が盲腸で手術を、その前には祖母が同じく盲腸で手術をしておりました。どういうことなの…

病院では途中で痛くて歩けなくなり、生まれて初めて車椅子に乗せてもらいました。見知らぬおばあちゃんに「若いのに可哀相にねえ」などと声をかけられ、逆に申し訳ない気持ちになりました。

超音波エコーの検査などを終え、再び診察室に戻ると、お医者さまが

「けいしつですね」

と仰りました。

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盲腸ではない様子。だけど「けいしつ」なんて聞いたことがない。

「け、血栓ですか?」とトンチンカンなことを言う私に、お医者さまがけいしつ(憩室)について教えて下さりました。

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憩室とは、腸壁の一部がどういうわけか外へ袋状に飛び出しているものを指すらしいです。憩室を持つ人はわりと多く、たいていは無症状とのこと。しかし、そこに便や細菌がたまって炎症を起こすと「憩室炎」となり、腹痛や発熱が起こるようです。炎症が進むと憩室が破れ腹膜炎を起こして手術が必要になるらしいのですが、私はそこまで重症ではないとのこと。炎症を起こしていた場所が腸の上の方だったので「上行結腸憩室炎」と診断されました。

※これが腸の「虫垂」という場所で起こるといわゆる「盲腸」(虫垂炎)になるらしいです。憩室炎と盲腸は場所が違うだけで起きていることはだいたい同じとのこと。しかも上行結腸憩室炎と盲腸はどちらも右下腹部が痛くなるのでパッと見わかりづらいらしいです。

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なるほど。
私の腸には憩室なんてものがあったのか。
もっと言うと、エコー検査の時「私にも腸があったのか…」などと呑気なことを考えていました。

とりあえず原因がわかってホッとしました。
どのくらいで治るんだろうな〜薬飲むのめんどくさいな〜などと考えていたら、
お医者さまに

一週間ほど入院していただくことになると思います

と衝撃的な一言を告げられました。
(薬もらって帰るつもり満々だった)

しかも

一週間絶食です(腸を落ち着かせるために)

とさらに衝撃的な一言を告げられました。

( ゜Д゜)!?

え、そんなに悪くないんじゃなかったの…?
物事をよく理解できぬまま、どういうことなの…と思っていると
問答無用で診察室から入院病棟へと運ばれてしまいました。

点滴オンリーで一週間近く過ごすのはえらい辛かったです。点滴をしているので死なないのですがお腹はめっちゃ減るんですよ…。「憩室」なんて、単語だけ見ると休憩中の疲れたオジサンたちがタバコを吸いながらお互いに「調子、どうっすか」とか質問しあってそうなゆるいイメージなのに…!!空腹ぶりが半端ない。このご時世でも「絶食」なんていうアナログな治療方法があるとは…。私はずっとラーメンのことを考えて過ごしました(入院中の食事事情についてはTwitterをご覧下さい)。ごはんが食べられるってありがたいことですね…。

お陰様で、22日の日中に無事に退院いたしました。退院の日の朝まで点滴をしていたのでまだフラフラしていますが、元気は元気です。

今回の入院で一番ショックだったことは、病気になったことではなく「あんなに絶食したのに2キロしか痩せなかった」ということ(点滴ってスゴイ…)と、お見舞いに来てくれた同級生(現役医師)に「これ、オッサンがよくなる病気だぞ」と言われたことです。

入院中、いくつかのお仕事ができなくなり、大変ご迷惑をおかけいたしました。本当に申し訳ありませんでした。皆様も健康にはどうぞお気をつけてください。