はじめて

私は誰かが「人生で初めて○○する瞬間」を見るのが好きです。

赤さんは毎日が初めてのことづくしなので、大変面白いです。2ヶ月になり、できることもどんどん増えてきました。GWには、はじめてベビーカーで長い時間の散歩ができました。

初めてのワクチン接種も経験しました。一日に、経口ワクチン1つと、注射3本を打ちました。注射はブスリと刺される瞬間だけ痛かったようで「ヒーン!!!」とこの世の終わりみたいな絶叫をかましていましたが、そのあと泣きはせず、眉間にシワを寄せて耐えていました。偉い。経口ワクチンは子供向けに味がついていて美味しかったらしく、もっと飲みたそうにペロペロしていました。先生に「吐き出す子が多いんですけどねえ」と言われて若干恥ずかしかったです。

最近は自分の手の存在に気付きつつあり、「アガガ、アガガ」と変な声を出しながら拳を口につっこんでなめています。苦しくないのだろうかと心配になりますが、本人は楽しそうです。

この間、インスタで「赤ちゃんの食いつき最高」と評判になっていたオモチャを買ってみました。謎のキャラクターがついたガラガラなのですが、与えてみたところ、なんと、自分の手で掴んで、触覚(?)みたいなところを一生懸命ガジガジし始めました。今まで、オモチャに対しては”動いているものを見つめる”程度の受動的な態度でしたが、初めて「掴ん」で「かじる」という能動的なアクションを起こしたので感動しました。

でも数秒後には「あんなにかじってたのに!」と突っ込みたくなるくらい、無慈悲にポイ捨てしていました。

大人と一緒に、湯船に入れるようにもなりました。お風呂は大好きらしく、入る前にギャン泣きしていても、お風呂に入った途端、機嫌が良さそうになります。

お風呂に入れるのはダンナの役目なので、私はいつも赤さんが出てくるのをドアの外で待っています。ある日、お風呂の中でダンナが赤さんに語りかける声が聞こえてきました。

ダンナ「いつか温泉に入れるようになるといいねえ。でも温泉に行くと、オッサンのオ○ンチンをたくさん見ないといけないんだよ」

……なんの話しとんねん。

赤さんを見ていると、私達が日々当たり前のようにできていることが、本当は当たり前じゃなくて、とても尊いことなんだと気付かされます。育児というのは、人生の再発見の旅なんじゃないかなと思えてきました。

ワードセンス

ウォークインクローゼットの電球が切れてしまいました。ダンナに取り替えをお願いしたところ、特殊な形状でよくわからないとのことで、管理会社に電話して交換方法を教えてもらうことにしました。

数分後、電気がつきました。

ダンナ「管理会社の人が、中にイカみたいなものがあるので、それを外してくださいって言うのよ」

私「イカ……?」

ダンナ「たしかにイカだった」

なる……ほど……

外の世界

伸び放題になった髪の毛を切るため、ダンナに子供を見ていてもらって、久しぶりにひとりで外出しました。

思えばこの3ヶ月くらい、世間から隔絶された部屋の中で過ごしていました。最後に触れた景色はまだ冬でした。気がつけば桜はだいぶ前に終わってしまっていて、世界は夏に近づいていました。季節をひとつスキップしてしまった気分です。

最近ようやく「カメラを持とう」という意欲がわいてきたので、近所で少しだけ写真を撮ってみたり。なんてことのない景色をおさめただけですが、すごく贅沢なことをしているような気持ちになりました。以前の当たり前は、もう当たり前じゃないのだと実感しました。

「ゆっくりしてきたら」とダンナが言ってくれたので、美容室に行ったあと喫茶店に入ってみました。そこで、なんとなく、赤さんを見守るために家に設置した、ライブカメラの映像を見てみました。

すると、ライブカメラには、ダンナと楽しそうに遊んでいる赤さんが映っていました。赤さんは見たことのないくらいニコニコ笑顔でした。「おい、私といるときより楽しそうやんけ……」と強い嫉妬心が芽生え、速攻で家に帰りました。

1か月

赤さんという不思議な生き物と暮らすようになって1ヶ月ちょっと経ちました。

陣痛から出産まで3日ほどかかり、しかも出産時のダメージにより、出血多量による貧血、会陰切開の傷、痔、便秘、尿が出なくなる、尾骨の歪み、無痛分娩の麻酔の副作用による蕁麻疹という、下半身トラブル役満状態となりまして、産後はしばらくヨボヨボでした。この年齢になって、人生で一番つらかった出来事を更新するとは思いませんでした。出産、ハンパねえ……(白目)。

退院後は実家で両親に助けてもらいながら回復につとめ、1ヶ月経った現在は、身体もほぼ元通りになったので、自宅に戻り赤さんと過ごしています。

赤さんは、自分のオナラに驚いて泣き出すような繊細さを持ちながらも、不快なことがあると、それが取り除かれるまで延々とフルパワーで「ギャアアアアアアアアアアア」と絶叫したり、「ン゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」と痰の絡まったオッサンのような唸り声をあげるという異常な力強さを持っていたりもして、すごく不思議な存在です。

生まれてからしばらくは、目の焦点もあっていないしあまり動かないしで、全体的にボンヤリしている感じでしたが、最近は人の顔やオモチャをガン見したり、手足をバタバタさせたり、笑いながら「アー」とか「ウー」とか言葉のはじまりっぽい発声をするようになり、人間らしさを増してきてとてもかわいいです。いつの間にかオムツも新生児用からSサイズに。

ほぼ完母(完全母乳)で育てているので、赤さんの横でスタンバっていて、泣いたらひたすらおっぱいをあげるという毎日です。頻繁におっぱいを欲しがるタイプの子らしく、一日15回くらい授乳する日もありました。夜中に何度も起きるので私の眠さMAX。

最初の頃は赤さんもおっぱいをうまく吸えなかったので、慣れさせるためにギャン泣きするのを抑えつけて「大丈夫!キミならできる!」と修造ばりに励ましながら飲ませていましたが、それがとてもかわいそうで、毎回授乳タイムが恐怖でした。しかも乳首が痛くて泣きそうで、「完ミ(完全ミルク)にするか……」と何度考えたかわかりません。赤さんにおっぱいをあげるのがこんなに難しいと思いませんでした。

そうこうするうちに、1ヶ月あたりから赤さんも私も授乳に慣れてきて、回数もだんだん減ってきたので、以前よりはお互いに余裕を持てるようになりました。

いまの私は赤さんにとってのドリンクバー。という話をダンナにしたら「じゃあ俺はATMだな……」と言っていました。

赤さんは、ミルクと皮脂が混ざったような、なんともいえない湿度の高い匂いがします。いい匂いとはちょっと違うんですが、絶妙に癖になる香りで、たまに頭のてっぺんを嗅いでニヤニヤしたりしています。

「これが……レタッチのいらない肌……!」と驚くほどお肌もキメが細かく、ツルッツルでうらやましい限りです。白目も青に近いような白さ。(カメラマン的視点)

子育ては大変でわからないことだらけですが、全てはいつか来る最後に向かっていると思うと、いまから寂しくなってしまいます。この一瞬一瞬に感謝しながら、大切に過ごしていきたいです。

ご報告です

私事で恐縮ですが、先週、元気な男の子を出産いたしました。

妊娠中は、たくさんの温かいお言葉とお気遣いをいただき、本当にありがとうございました。

これからは、多くの奇跡の後にここへやってきてくれた小さな命を大切に育てていきたいと思います。

お仕事は、数ヶ月間お休みさせていただく予定です。

最後まで何があるかわからなかったので、SNS上では妊娠を公表していませんでした。突然のお知らせとなり、すみません。

妊娠・出産は、人生観が覆るような出来事の連続でした。書きたいことがありすぎて、プライベートで3万字近い日記のようなものをつけていました。そのうちこちらで公開させていただくかもしれません。

ブログを始めて13年。このようなご報告をさせていただく日が来るとは思いませんでした。人生なにがあるかわかりませんね。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

遺影

少し前に撮影させていただいた方。ご家族から「写真の大きなデータが欲しい」とご連絡がありました。なんだろうな?と思ったら、その方がお亡くなりになったので遺影に写真を使いたいとのことでした。

ほんの数か月前の撮影時はお元気そうで……そんな風にはまったく見えなかったのでショックを受けました。

この写真が遺影に使われるなんて、撮影時は微塵にも思いませんでした。

一瞬一瞬を大事にしようと言うけれど、本当にそうですね……。

被写体の方にまた会えるとは限らない。

ご冥福をお祈りいたします……。

一場春夢

運転中、信号待ちをしているときふと窓の外に目をやると、満開になった大きな桜の木が。きれいだなあ、なんて思いながら眺めていると……

桜の木の下にあるアパートから、白い布がかけられたストレッチャーと、黒い服を着て、神妙な顔つきをした人たちがぞろぞろと出てきました。ストレッチャーは、すぐに近くに停まっていた黒い車の中に運び入れられました。

散りゆく白い花びらに包まれたその光景はあまりに穏やかで眩しく、まるで白昼夢を見ているようでした。

2年前、大好きだった人にお別れを告げた日と同じ感じがしました。

春。