最近お友達になった小説家の関口尚さんが「ゆり茶さん好きそう」とオススメしてくださった絲山秋子さん。彼女のデビュー作である『イッツ・オンリー・トーク』を読んだのをきっかけに、その淡々としながらも胸の奥を抉るような作風に大ハマりしてしまい、ここのところ絲山さんの小説ばかり読んでいる私ですが、昨日、衝撃的な一冊に出会ってしまいました。
『袋小路の男』という短編集です。
私はそのとき呑気にタリーズで読書していたのですが、読み進めるうちに、あまりに感動…というより心が揺さぶられすぎて、人目をはばからずガン泣きしてしまいました。
『袋小路の男』は、それなりにイケメンだけど、クッソ自分勝手でプライドばかり高く、自分に才能があると思い込んでるけど人生で結果が出せなくて燻っていて、周りからの評価もイマイチな、一言でいうと「ダメ男」を、無条件に10年以上も想い続ける女性のお話です。気まぐれに「食事につきあえ」と言われればどんな予定があっても彼を優先し、彼が怪我をすれば一番に駆けつけて看病して…完全に「都合のいい女」であることはわかっているけど、それでも、彼のことが好きだからすべてを捧げてしまう主人公…。
あああ…
私、むかし、
まったくおんなじ状態だったわ…
どうしよう!!!わかりすぎる!!こわい!!!と、あまりのシンクロ率に、途中からページをめくるのが恐ろしくなってしまいました。読書というかもはや追体験。
特に「こりゃ完全一致だわ…」と思ったのは
私はつい口にした。
「あなたにとって私って何なんですか」
あなたは数秒考えて、そしてカタカナで答えた。
「ワカラナイ」
のくだりです。
むかし、まったく同じ台詞を言われたことがありますよ…。テメー、ワカラナイって何だよ!と憤慨してしまいそうになりますが、結局、都合のいい女の存在とは、その「ワカラナイ」の一言に集約されているのです…。過去フラッシュバック、ああ死にたい。
あと、
恋人未満家族以上。
それってなんなんだ。
あなたは言った。
「オフクロがオヤジを看取って、俺がオフクロを看取って、俺は誰に看取られるのかなあ」
「私です」
何の疑いもなかった。大阪からでも北海道からでも駆けつける。車のトランクの奥の方にそっと黒い服を積んで高速を走っていく自分の姿が想像できる。私は、病院に押し掛けた日のことを思いだしながらアクセルを踏むだろう。
のくだりも。
むかし「彼氏でもなんでもないけど、この人の最期を看取るのはきっと私なのだろう」という妙な自信を持っていたことを思い出しました。友達ともこの話をしたこともあるし…。ああ、同じすぎてこわいよう。みんなそんなこと思うんだな。
…テンションが高まってついつい長文を書いてしまいました。すみません。
そんなわけで、私の中で『袋小路の男』は忘れられない一冊となりました。過去のエントリーで「マイベスト小説は江國香織さんのホリー・ガーデン」と書いたことがありますが、今回そこに『袋小路の男』が加わりました。自分のツイッターアカウントはHoly_Gardenですが、それをFukurokoji_Otokoとかに変更してもいい、と思いました。
行動というハシゴを登った先に感情が見えてくる、というやつですね。いろいろやってあげると好きになってしまう、人間はそうできているそうな。
でもって、人間は無償で施しを受けると自尊心を奪われる感覚を覚えて、逆に相手を嫌いになっていくそうな。
尽くせば尽くすほど好きになり、尽くされれば尽くされるほど嫌いになる。Give&Takeのバランスを取れるか否か、それが大事なのかも。
こういった場所はやはり気になります。
外と同じように部屋の中で栄える植物。植物にとっては関係無いのに、人間から見ればそれだけで意味を持って見てしまいます。
いいお話にめぐり合えましたね。
私もそんな書に出会ってみたいです。
私とは違う人物ですが、物凄く分かるような気もします。誰しも少しずつはそういった部分を持っているのかもしれません。
そういった心の奥底を見つけ出し、引っ張り出せる作家さんというお仕事、改めて凄いです。
「ワカラナイ…」
そう言ったら、平手打ちを喰らったことあります(泣)
だって、ワカラナイものはワカラナイ。
そういうビミョ~な関係ってあると思うんですが、
女はそういうのをなかなかわかってくれない気がします。
それとも、やはり男が悪いのか?
ん~、ワカラナイ。
辻仁成さんの「目下の恋人」という短編も読んでみてください。
うわっ、『最期を看取る』のくだり…、身に覚えアリです。
ついでに、許されるものなら骨が欲しいと言った気が…。
はるかむかしのことのように思えるけど。
私も妙な自信を持っていて、その場面を妙にリアルに思い描いていたのを思い出しました。
絲山秋子さんの作品、私も読んでみる!
>>kakitsubataさん
確かにそうですね!
私は好きになられるとその人のことをとても嫌いになります(笑)
だから、嫌われてもいいので尽くす方を選びます〜。
>>SDさん
こういった、植物が栄えている陰気な場所が大好きです。
最近はこういう場所しか行っていない気がいたします。
逆に、開放的な遺跡っぽい廃墟は好きじゃないんです^^;
偶然ですが、大好きな作家さんと作品に出会えて嬉しいです。
絲山さんはフィーリングがぴったりなんですよね。
SDさんも、ぴったりだな〜と思う本に出会えると良いですね♬
>>hironekoさん
ワカラナイのもわかってるんですけどね(笑)
まあそうなっちゃうよね〜と。
でもなんかもうちょっと言い方があるだろうよ、と思ってしまうんですよね。
「都合のいい女」の立場に甘んじているというのに、ワガママですなあ(女が)
目下の恋人、読んだことがないので探してみます!
>>lisa
りさは絲山さんの本はそんなに好きじゃないかもしれないけど『袋小路の男』だけはオススメしたい!
この話、したよね。だいぶ前(笑)りさがそういってたの覚えてるよ〜。
最後を看取るくだりのあとに骨のくだりも出てくるから読んでみて。衝撃だよ(笑)
ああ、これはりさに教えてあげないとなって思った!
きゃー、
私もちょうど古本屋で「イッツ・オンリー・トーク」を買ったのでタイムリーだ!
「袋小路の男」も、好きな作家さんがおすすめしてたので買おうか悩んでたから、早く買おう~と思いました。
>>えりさん
わあ、そうでしたか!それはタイムリーですね!
袋小路の男もぜひ☆
私も最近は絲山さんの本ばかり読んでいます。
もう少しで全制覇できそうです!
どうもはじめまして
フィルム名で検索するとよくゆり茶さんのブログにヒットするのでたびたび拝見させていただいています。
僕も袋小路の男をいとやまさんの作品では初めて読んで、そっからそっこーいとやま作品コンプリートしました
袋小路の男に掲載されている「小田切孝の言い分」を読んでこのしょうもないダメ男に共感しちゃった自分がちょっと怖かったー
いとやまさんは友達以上恋人未満というか、恋人以上の関係の男女とでもいいましょうか、ほんと表現するの上手いですよね
>>ぼんくらさま
はじめまして!
お返事が遅くなってしまってごめんなさい。
このようなブログを読んで下さってありがとうございます!
絲山さん作品コンプされているのですね!
私はもうちょっとでコンプです(エッセイなどがまだ未読で…)
小田切孝の言い訳も面白かったです。女ですがわたしも共感できましたよ〜(笑)
確かに絲山さんは微妙な関係の男女を描くのがお上手だと思います!