一場春夢

運転中、信号待ちをしているときふと窓の外に目をやると、満開になった大きな桜の木が。きれいだなあ、なんて思いながら眺めていると……

桜の木の下にあるアパートから、白い布がかけられたストレッチャーと、黒い服を着て、神妙な顔つきをした人たちがぞろぞろと出てきました。ストレッチャーは、すぐに近くに停まっていた黒い車の中に運び入れられました。

散りゆく白い花びらに包まれたその光景はあまりに穏やかで眩しく、まるで白昼夢を見ているようでした。

2年前、大好きだった人にお別れを告げた日と同じ感じがしました。

春。