谷中レトロカメラ店の謎日和

今日の記事は仕事とはまったく関係ありません。

ゴールデンウィーク中、柊サナカさんの『谷中レトロカメラ店の謎日和』『谷中レトロカメラ店の謎日和 フィルム、時を止める魔法』(いずれも宝島社文庫)の2冊を読み終わりました。

こちらの小説は、東京・谷中にあるレトロカメラ専門店「今宮写真機店」を舞台に、店に持ち込まれるさまざまな謎を、三代目店主・今宮が鋭い観察力と推理力で解き明かしていく……という内容です。基本的に、今宮が、写真やカメラに明るくないアルバイトの来夏(ライカ)に対して語りかけるような形式で物語が進行していくので、知識のない方でも安心して読むことができます。

1話ごとに、必ずキーとなるレトロカメラが登場します。ニコンF やライカⅢf、マキナ67といった有名どころから、リコーオートハーフ、ハリネズミカメラ、ステレオグラフィックといった変わり種まで、幅広いラインナップとなっています。今宮がそれぞれのカメラのことを丁寧に解説してくれるので、実際にその機材を触っているような気分でカメラの仕組みと歴史を勉強することができます。

ただ、カメラうんぬんを抜きにしても、どんな人にも思わずすすめたくなるような、人間の温かさが伝わってくる素敵な小説です。謎解きあり、適度なドキドキあり、その緩急のついた展開に引き込まれ、気がついたら2冊読み終わっていました。2巻の最後はちょっとビックリしましたけど(笑)

個人的な感想を述べさせていただきますと、2010年まで中古カメラ店で、店長と二人三脚でお店に立っていた者としては、他人事とは思えないお話でした。ときどき来夏の視点と自分の視点が交差することがあって、「デジャブ」に近い感覚でした。読んでいて笑ってしまったのは、来夏が“店長の奥さんに間違えられる”ところです。これ本当によーくあるんです。わたしもたぶん200回くらいは間違えられました。

「人にもカメラにも、それぞれの歴史と謎がある」と帯に書いてありますが、実際お店で働いていたとき、(小説ほどではないですが)その通りだなあと思う出来事がたくさんありました。

わたしが最初に買った中判カメラ・ローライコード4には「Michel」(誰)という名前が彫ってありました。疑問に思って店長にきいてみたところ「海外では、カメラに自分の名前を掘る習慣があるんだよ」と教えてもらいました。そうか、以前は外国の方が所有していたんだな……どこの国で、どんな人たちと過ごしてきたんだろうな、と、そのカメラの歴史に思いを馳せてみたりしていました。

あとは、カメラにモノクロフィルムが入ったままになっていたこともありました。興味があり現像してみたところ、尋常ではなく上手な外国人女性のポートレートが写っていて「前の持ち主すげEEEEE」と驚愕したこともありました。

さらに、キエフ60の裏蓋が見たこともない形に改造されていて、(ご近所のアカサカカメラさんにも手伝ってもらって)みんなで知恵を絞って開けたこともありました。プチ謎解き。あれは総力戦だったなあ。

……ついつい長くなってしまいました。

『谷中レトロカメラ店の謎日和』と『谷中レトロカメラ店の謎日和 フィルム、時を止める魔法』を読んで、自分が「写真好き」であることを再確認し、お店をやめて7年経ったいまでも、写真の仕事を続けられていることに幸せを感じました。

出合えてよかったなあと思える小説です。みなさまもぜひ。

続編が楽しみ。

谷中レトロカメラ店の謎日和
https://www.amazon.co.jp/dp/4800245613/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_jL8ezbZ3S4JPG

谷中レトロカメラ店の謎日和 フィルム、時を止める魔法
https://www.amazon.co.jp/dp/4800261538/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_CH9ezb478GC5M

※余談ですが、先日、日暮里に新しくオープンした「三葉堂寫眞機店」を取材させていただいたのですが、このお店はまさしく「谷中レトロカメラ店」じゃないか!と驚いているところです。偶然ってすごい。記事はこちら(http://camerafan.jp/cc.php?i=566

※さらに余談ですが、作中、店主の今宮は冴えない男みたいな扱いになっていますが、わたし的には超イケメンの部類です。文系知的男子最高DAZE……!!あの手この手を使ってでも付き合いたい、などと考えていました。来夏ちゃん、もうちょっとがんばってよ!(ババアの戯言)

2件のコメント

  1. 面白そうですね!「愛を振り込む」以来、久しぶりに読書の面白さを再発見しているところなので、今読んでいるものが終わったら手に取りたいです。
    私の二眼レフ(ヤシカマット)もベルギーの方から購入したものだったので、このカメラが日本で作られ、海を渡ってどんな人生を歩んで帰ってきたのかなあ…と想像したりします。中古カメラはいろんな経緯がありそうなのも面白いですよね。

  2. >>SDさん
    ぜひぜひ!SDさんには気に入っていただけると思います。
    カメラの歴史に思いを馳せるのも楽しいですよね。
    ヤシカマットいいですね。フォルムが好きなので以前から狙っています(笑)

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